自動釣銭機の導入メリットや注意点は?検討している店舗オーナーが抱える疑問点についても解説

自動釣銭機の導入を検討している店舗の中には、「開業資金が少なく、初期費用を抑えるために、よくあるキャッシュドロアを使っていたが、コンビニエンスストアやスーパーマーケットで使われている自動釣銭機は、業務効率化、ミス防止、不正防止を期待できそう」という人も多いようです。また、業種によっては「現金の受け渡しによる直接的な接触がないことから衛生面で安心できる」という声を聞くこともあります。この記事では、自動釣銭機導入によるメリットや注意点、また導入を検討している店舗オーナーが抱える疑問点について解説していきます。

自動釣銭機を使う4つのメリット

  • レジの打ち間違い・
    おつりの渡し間違いの防止

  • 現金管理・
    レジ締め時間の短縮

  • 内部の不正対策・
    セキュリティの向上

  • 感染対策・
    衛生管理の強化

自動釣銭機は、単純に「レジ業務が楽になり、便利だから」というだけで導入されているわけではありません。通常のキャッシュドロア(お釣りを入れておくもの)と比べるとさまざまな面でメリットがあるため、多くの飲食店や小売店で導入が検討されるようになりました。そこで、自動釣銭機を導入した際のメリットを4つ解説します。

レジの打ち間違いやお釣りの渡し間違いを防止できる

通常の会計業務は、お客様の注文伝票などを見ながらガチャレジや電卓などを使って計算して、合計代金を出した後に、お客様に「いくらになります」とこの合計代金を提示します。そしてお客様から代金を受け取り、お釣りがある場合には、お釣りを計算してお客様に渡す、という流れになっています。

そのため、自動釣銭機を使わない会計業務では、お客様から受け取った代金の合計額をレジで入力ミスした場合には、当然ながらお釣りの計算を間違えてしまいます。小銭や紙幣の枚数が多くなると、数え間違いも発生しやすくなります。また、受け取った代金を正しく入力しても、お釣りを金種別に計算して渡すことになるため、誤った金額のお釣りをお客様に渡してしまうリスクもあります。

これらのミスを自動釣銭機で解決することができます。お客様から受け取った代金をそのまま自動釣銭機に投入すると、自動計算されるため、代金の計算で間違えることはありません。また、お釣りが自動釣銭機から自動的に排出されるため、お釣りの計算を間違えることもなくなります。

新しく入った従業員がレジ業務を任された場合に、接客に慣れていないと緊張して注文金額の入力や、お釣りの計算、お客様から受け取った代金の入力、お釣りの受け渡しを間違う可能性が高くなります。自動釣銭機ならミスが発生しにくいので、新しく入った従業員にも安心してレジ業務を任せることができます。

現金管理がしやすくなる、レジ締めの時間も短縮

店舗経営をしていると、売上金とレジの中のお金に差額が無いかを確認する「現金過不足の確認作業」を営業時間中に何度も行い、さらに営業時間後にレジ締め作業を行います。

通常のキャッシュドロアでの現金過不足の確認は、目視で金種別にお金を数えて、キャッシュドロア内のお金の合計額を出し、売上の合計額を出してキャッシュドロア内にあるべきお金の合計額との差額を確認します。その結果、現金過不足が生じるケースが多いのが実態です。

しかし、自動釣銭機を導入すれば、改めて手作業で現金を数えなくて済むため、現金過不足の確認作業は不要になり、レジ締めの時間も大幅に短縮できます。

内部の不正対策やセキュリティの向上

通常のキャッシュドロアでは、会計業務の時以外でも、レジ上の操作でキャッシュドロアを開けることができるものが多いため、内部外部問わず悪意のある人が不正にキャッシュドロアからお金を取り出すことができてしまいます。

自動釣銭機の場合、現金収納庫の開閉作業が鍵で管理されていたり、操作状況の履歴が残るものが多いため、内部の不正対策や盗難防止など、セキュリティ向上に役立ちます。

感染対策・衛生管理の強化

コロナ禍の影響を受け、お客様の中には、「少しでも店員さんとの接触を少なくしたい」と考える人も少なくなくなりました。自動釣銭機を導入すれば、お釣りの受け渡し、そして機種によっては代金の受け取りがお客様と接触せずに行えるようになるため、感染リスクを縮小することができます。

自動釣銭機の導入には初期費用と設置スペースの確保が必要

自動釣銭機の導入の注意点は、キャッシュドロアと比較すると高額になりやすく、機器が大きいためレジスペースを確保しなければいけない点です。そこで、実際に自動釣銭機はどのくらいの大きさで、どの程度の価格帯なのか解説します。

キャッシュドロアと比較した自動釣銭機の大きさや重さ

キャッシュドロアは金種別にお金を保管するものなので、比較的コンパクトですが、自動釣銭機はお釣りを自動で計算する機械や、代金を投入する受け口などがあるため、大型になりやすいのが一般的です。また、大きさだけでなく重さがかなり違います。

参考までに、キャッシュドロアは「幅30~40cm×奥行35~50cm×高さ10cm」程度の大きさで、片手でも持ち運びできる重さです。一方、自動釣銭機は「幅48~55cm(紙幣と硬貨投入口を含めて)×奥行54~60cm×高さ12~15cm」程度の大きさで、30kg以上するものもあり両手で持つのも大変な重さです。なお、実際に購入したい機種がある場合には、ウェブ上で検索すると製品仕様書がありますので、実寸の大きさや重さを調べることをおすすめします。

自動釣銭機の導入費用は、店舗状況による差があるため見積もりをとる

自動釣銭機の導入費用は、キャッシュドロアと比べて高いのが一般的です。導入時にはセットアップ費用も必要となり、その費用は店舗の状況によって異なるため、個別に見積もりをとる必要があります。購入したい機種がある場合には、メーカーや代理店に問い合わせの上、検討しましょう。

自動釣銭機を後から導入する場合、レジの種類によって連動の可否が異なる

自動釣銭機を導入したいと考えたときに、「今使っているレジから買い替える必要があるのか?」「レジを変えなくても後付けで連動できるのか?」という疑問を持つ人もいるでしょう。自動釣銭機とレジとの連動は、レジの種類によって、できる・できないが分かれます。

自動釣銭機を後から導入してもレジと連動できる場合

最近多くなってきたタブレットPOSレジなどは、追加オプションなどで自動釣銭機を後から導入してもレジと連動させることができる場合が多いです。連動するにあたって必要な操作や導入コストはサービスにより異なるので、今使用しているレジシステムの会社に問い合わせてみましょう。

自動釣銭機とレジが連動できない、もしくは追加費用が高額になりそうな場合

自動釣銭機とレジが連動できない、もしくは追加費用が高額になり過ぎる場合には、レジ業務を自動化できないことによるデメリットとコストを比較の上、レジの交換を検討するのも一案です。タブレット型POSレジは導入コストが比較的安く、自動釣銭機との連動ができるほか、売上管理などの機能が搭載されています。場合によっては、今のレジよりも使い勝手が良くなることもあるかもしれません。

自動釣銭機の導入検討Q&A

自動釣銭機の導入検討に関して、よくある質問をQ&A形式でまとめましたので参考にしてください。

自動釣銭機を導入すれば、現金過不足が必ず0円になると聞きました。本当でしょうか?

自動釣銭機が常に正常に機能している場合、理論的には、お客様から受け取った代金の集計、お釣りの排出に間違いが生じないため、現金過不足が発生しないことになります。

しかし稀なことですが、自動釣銭機の搬送部がつまることで、お釣りの排出不足が生じる場合もあります。そのため、自動釣銭機から出たお釣りを確認せずにお客様に渡すのではなく、レジ担当者が目視で確認の上でお釣りを渡すようにすれば、現金過不足は限りなく0円になります。

今までキャッシュドロアを使っていたのですが、自動釣銭機の導入を検討しています。補助金などで支出を減らしたいと考えていますが、何か対象になる補助金や助成金はありますでしょうか?IT導入補助金は名前的に対象になりそうですがいかがでしょうか?

「小規模事業者持続化補助金」や「業務改善助成金」などが自動釣銭機の導入の際に使える可能性がある補助金や助成金です。IT導入補助金は簡単に言うと「生産性を高めるソフトウェア(※1)」に対する補助金のため、自動釣銭機のようなハードウェア(※2)の導入には使えません。

  1. ソフトウェア:物理的な実体を持たない、パソコンやスマートフォンで使うプログラムのこと。例えば、表計算ソフトなど
  2. ハードウェア:物理的な実体がある機器のこと

小規模事業者持続化補助金は、従業員数が少ない法人や個人事業主を対象に給される補助金です。販路開拓や生産性向上のための費用を補助するものです。自動釣銭機は生産性向上という側面があるため、補助金の対象になる可能性があります。しかし、自動釣銭機単体では、採択されない可能性もあるため、POSレジと組み合わせて導入を検討すると可能性が高まるかもしれません。(POSレジは「IT利活用の取り組み事例」の1つとしてピックアップされています。)

業務改善助成金は、従業員の労働環境改善により賃上げすることが前提ですが、業務改善により生産性を高める設備投資に対して国が助成金を出してくれます。自動釣銭機により労働環境が改善されるという計画書を作成できれば助成金が採択される可能性があります。

なお、補助金や助成金は、要件を満たしたからもらえるというものではありません。計画書を作成し計画が採択されないと給付されませんので、注意が必要です。

開業2年目で、自動釣銭機の導入を検討しているのですが、見積もりを取ったところ金額が高額で断念しようか迷っています。補助金や助成金は後払いだと聞いたので、まずはどのように資金を捻出すべきでしょうか?

自動釣銭機は機種によりますが、どうしても数十万円以上の覚悟が必要です。支出額を減らすアイデアとして、「中古品を探してみる」「リースなどの分割支払いの有無」「融資」などを検討してみてはいかがでしょうか。

自動釣銭機の中古品はウェブ上でも検索可能で、数万円~20万円ぐらいで購入可能なものもあります。機種的に古くなく、老朽化もなければ十分に使える可能性がありますので中古品を探してみるというのも良いかもしれません。なお、中古品を購入する場合には補助金や助成金の対象にならない可能性が高くなるので注意してください。

新品のリースという手段もあります。メーカーから直接購入する場合、リース会社を紹介してくれるケースがあります。100%リースが組めるわけではありませんが、リースを組むことで初期投資額を減らすことができます。なお、リース料には利息分も含まれるため、機械の総額よりもリース料総額が多くなる点には注意が必要です。

融資を獲得するという方法もあります。新規開業の場合、日本政策金融公庫による「創業者融資」などを活用することで、通常の銀行融資と比較すると比較的簡単に融資を受けることができます。融資には事業計画書やご自分の経歴、借入の情報などの個人情報などが必要になりますが、運転資金を含めて融資を受けることができれば余裕を持った開店が可能になります。創業者融資は、確定申告が2期終わっていない方を対象にしていますので、2年目であれば対象です。

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自動釣銭機にも対応

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監修者ひとことコメント

自動釣銭機はさまざまな会計業務を簡略化することができるため、レジ回りの業務など店舗の運営がとてもスムーズになります。メーカーからの価格見積もりが高くて断念してしまう人もいますが、補助金や助成金を検討しながらリースや融資などを活用する方法もあります。支出を最小限にして自動釣銭機を導入することができれば、とても便利な機械だと思います。ぜひこの記事を参考に、自動釣銭機の導入を前向きに検討してみてはいかがでしょうか。

監修者プロフィール

  • 福島 悠(ふくしま ゆう)経営コンサルタント/公認会計士

    公認会計士、税理士。経営改革支援認定機関/SOLA公認会計士事務所 所長。
    上場企業の顧客向け税書類の監修や経営コンサルティング、個人事業の事業戦略支援と実行支援まで幅広く対応。顧客収益最大化を理念に掲げ起業家を徹底サポート。多種多様な企業の税務顧問と年間約30件の戦略立案を行っている。
    https://sola-cpa.com/

本ページに記載されている情報は2023年3月時点のものです

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